生涯独身の人は増えている|未婚率の推移、結婚の意識変化と将来の備えについて解説
この記事のライター:黒川ヤスヒト
マネープランについて考える時、結婚するか独身でいるかの選択は、大きな違いを生み出します。教育資金・住宅資金・老後資金など、さまざまな面でメリット・デメリットがあるため、お金の面からもよく考えなければならない問題といえるでしょう。国立社会保障・人口問題研究所の「人口統計資料集(2021)」や、内閣府の「平成30年版 少子化社会対策白書」の推計を見るとわかるように、ここ最近の傾向としては、生涯独身でいる人が増えています。理由としては、お金だけでなく、結婚に対する意識の変化が関係しているようです。未婚率のデータを見ながら、独身の場合のマネープランについて解説していきます。
生涯独身は増えている?
結婚をするかしないか。これはライフプラン、マネープランに大きな影響を与える選択です。収入と支出の見積もり方も違ってくるでしょうし、必要な保険にも違いが出てきます。また結婚するタイミングも重要です。結婚し子どもがいる場合、教育資金が必要となる時期が、老後資金を準備したい時期と大きく重なってくることもあります。このようにさまざまなライフプランが存在する中で、今回注目するのは、生涯独身というケース。まずは生涯独身という人についての、データをチェックしてみましょう。
政府の人口に関する統計においては、「生涯未婚率(しょうがいみこんりつ)」や「50歳時未婚率」という言葉が使われています。定義は、「45~49歳での未婚率と、50~54歳での未婚率の平均値」です。50歳の時点で未婚の場合、それ以降に結婚するケースは少ないと考えられることから、「50歳時未婚率」が生涯独身でいる人の割合を示す統計上の数字として使われています。近年、その数字は増加傾向にあるようです。
国立社会保障・人口問題研究所の「人口統計資料集(2021)」を見ると、1920年から2015年までの、「50歳時の未婚割合」の推移が国勢調査の数字をもとに算出されています。例えば女性の場合、1920年には、その割合は1.80%でした。その数字が1970年には3.33%とやや上昇し、2000年には5.82%となっています。その後2005年に7.25%、2010年に10.61%、2015年に14.06%となっていて増加傾向にあることが分かります。ちなみに、男性の数字も見てみると、2015年の数字は23.37%となっており、女性の場合と同様に増加傾向が見られます。
内閣府の「平成30年版 少子化社会対策白書」の推計によれば、2030年時点の50歳時の未婚割合は、男性28.0%・女性18.5%、2040年には男性29.5%・女性18.7%となっています。男性は30%近くまで伸びる一方で、女性は18%台で緩やかな上昇になると見られているようです。結婚するかしないかは、個人的な人生の選択となっている一方、少子化とのかかわりも深く、社会的な関心事となっています。
参照元:国立社会保障・人口問題研究所|人口統計資料集(2021)
参照元:内閣府|平成30年版 少子化社会対策白書 第1部 少子化対策の現状(第1章 3)
近年の未婚率の推移
生涯未婚率・50歳時未婚率も気になりますが、これからのライフプランを考えるうえでは、それ以外の年代での未婚率も気になるところ。近年の推移とともに、もう少し詳しく見ていきましょう。令和2年版の『厚生労働白書』には、「年齢階級別未婚率の推移」がグラフで掲載されています。こちらも総務省統計局の「国勢調査」をもとにしたものです。20歳から54歳までの男女を、5歳ごとに区切って未婚率の推移をグラフ化しています。
厚生労働省|年齢階級別未婚率の推移
まずは20歳〜24歳の女性の場合を見てみましょう。1980年の未婚率は80%を下回っていました。そこからやや上昇し、1990年には86.0%になっています。2015年は91.4%という数字でした。20歳〜24歳の女性の未婚率は、1980年から2015年にかけて、少しずつ上昇しているのが分かります。ここ40年間においては、20歳〜24歳では未婚の状態が大多数ということには、それほど変わりはないようです。
一方、大きな上昇カーブとなっているのが、25歳〜29歳の女性。未婚率は1980年には20%台半ばでした。それが1990年には40.4%まで上昇。2015年には61.3%まで増えています。1980年には25歳〜29歳の女性だと、結婚しているケースが大多数でした。それが2015年には、未婚の方が多数派になるという逆転が起こっているのです。ただし2015年の統計で年代別に比較してみると、20歳〜24歳の未婚率が91.4%で、25歳〜29歳では61.3%まで下がることから、20代後半で結婚する女性の数が少なくないことも分かります。
30歳〜34歳の女性の未婚率も、1980年から2015年の間に、大きく上昇しました。しかし、これより高い年代の未婚率の上昇は緩やかになっています。生涯未婚率が増えながら、「晩婚化」も進んでいる様子が見て取れます。2015年の数字で、30歳〜34歳の女性の未婚率は34.6%、35歳〜39歳では23.9%、40歳〜44歳では19.3%、45歳〜49歳では16.1%、50歳〜54歳では12.0%となっています。