自転車保険が義務化に!都道府県ごとに違う制度と保険に入る意味とは
この記事のライター:黒川ヤスヒト
多くの地方自治体で義務化が進む、自転車保険への加入。自転車事故での賠償金が高額になっていることが背景にあります。ここでは高額な賠償金の判例や、各都道府県での義務化の状況、どんな保険に加入するべきかなどを解説しています。
自転車の事故とは、どのようなケースが想定されるの?
自転車の事故では、被害者への賠償が高額になるケースが増えてきていて、保険なしでは対応できないほどのものになっています。いくつかの自転車事故とその賠償額の例を確認しておきましょう。
神戸地方裁判所が平成25年7月に出した判決では、自転車事故の加害者に9,520万円の賠償を命じています。小学5年生の少年の自転車が坂道を下るときに、62歳の女性と衝突しました。この事故で歩行者の女性は意識不明となっています。
平成20年6月に東京地方裁判所が出した判決においては、賠償金の額が9,266万円となっています。男子高校生が運転する自転車が、車道を斜めに横断していました。その自転車が、対向車線を自転車で直進していた24歳の会社員に衝突。この事故で会社員には、言語機能を喪失するなどの重大な障害が残ることになりました。
さいたま地方裁判所が平成23年11月に出した判決では、1,706万円の賠償金支払いが命じられました。この事故は、女性が自転車で歩道を通行している際に、路地から歩いて出てきた35歳の女性に衝突したというものです。歩行者の女性は骨折しました。
普段気軽に乗っている自転車ですが、事故を起こした場合の結果は重大で、賠償額が大きなものになっているのがわかります。損害賠償額の内訳も多岐にわたります。たとえば死亡慰謝料。これは事故で被害者を失った遺族が負う、精神的な苦痛に対するものです。また事故で死亡しなかった場合・後遺症を負わなかった場合に得られていたはずの収入に対しては、逸失利益を賠償します。ほかにも治療費や介護費用、休業による損害などについても賠償する責任を負うことになるのです。
都道府県ごとに違う、自転車保険の義務化とは
自転車保険の義務化は、2015年10月に兵庫県で導入したのが始まりです。現在では、加入が義務となっている自治体、努力義務となっている自治体、2020年4月から義務化される自治体などに対応が分かれています。
2020年2月現在での、各都道府県での状況を確認してみましょう。自転車保険への加入が「義務」となっている自治体は12あります。仙台市、埼玉県、神奈川県、長野県、静岡県、金沢市、名古屋市、兵庫県、滋賀県、京都府、大阪府、鹿児島県です。
12の自治体では加入を「努力義務」としています。北海道、茨城県、千葉県、群馬県、富山県、和歌山県、鳥取県、香川県、徳島県、高知県、福岡県、熊本県です。
そして2020年4月から、自転車保険への加入が「義務」となる自治体は3つあります。東京都、奈良県、愛媛県です。自転車事故が増加し、賠償額も高くなっていることから、加入義務化の流れはこれからも続くことになるでしょう。
義務化の対象となるのは、その地方自治体の地域で自転車に乗る人です。義務化されていない自治体に住んでいても、自転車に乗る場所で加入義務があればそれに従う必要があるので注意が必要です。なお加入が「義務」や「努力義務」となっている自転車保険ですが、今のところ加入しないことへの罰則は規定されていません。
では自転車保険の義務化に対応するには、どのような保険に入っていればよいのでしょうか。条例では、自転車で事故を起こした場合に、相手に賠償ができる保険を求めています。必ずしも「自転車保険」という名称である必要はなく、自動車保険や火災保険にオプションで追加できる「個人賠償責任保険」で十分です。いずれの場合でも、支払われる保険金額は十分か、家族のどこまでの範囲が補償されるか確認しておきましょう。